OpenAIのSora、リアル動画で証拠性に揺さぶり

今この瞬間、スマートフォン上で証拠と娯楽の境界が揺らぎ始め、その中心にあるのがSoraだ。iPhone向けの無料アプリとして公開直後にApp Storeの無料ランキングのトップに立った一方で、利用は招待制のままでレディットやディスコードでコードが出回っている。カメラより一文のテキストが力を持つ状況は、オンライン媒体の常識を根底から変えている。

使い勝手は馴染みのあるショート動画の体裁で、TikTokやInstagram Reelsのような画面からプロンプトを入力するか写真をアップロードすると、およそ1分でSoraが動画を生成する。作品はアプリ内のフィードに投稿できるほか、TikTok、Instagram、YouTube Shorts、Snapchatにダウンロードして共有でき、尺は概ね最長10秒だ。OpenAIはウォーターマークとファイル内の署名データで追跡可能にしているが、単純なトリミングで表示のマークを消す例はすでに出ている。

グーグルのGeminiに統合されたVeo 3や、Meta AIアプリのVibeなど競合も登場しているが、もっとも現実味のある映像を見せている点でSoraが際立つ。質の飛躍は市民生活に直結し、ショート動画が支配するソーシャルの流れは本物らしく見える偽作に適した場になった。動画こそ真実の最終的な裏付けという前提は退場を迫られている。

人間の直感が道具の進化に追いつかないという警鐘は強まり、UCバークレーのレン・ン教授は現実の記録として扱う前に一息置いて考えるべきだとし、この心構えをSora時代の必須マナーだと語った。視覚で出来事を検証するという文化的習慣が反転し、疑いから入る姿勢が標準になる。

遊び半分の投稿が目立つ一方で、悪用の具体例も現れ始めSoraのリスクが輪郭を見せている。ナンバーを編集できる偽のドライブレコーダー事故映像や、個人を貶める架空のニュース、根拠のない健康情報をニュース調で語らせるクリップが作られ、同社は性的画像、悪質な健康助言、テロ宣伝の生成を禁じている。乱用を検知すれば対処するとも同社は述べている。短い尺と消しやすいウォーターマークは、アプリ外へ拡散した後の追跡を難しくする。

映画会社は既存の映画や番組、キャラクターを侵害する可能性を懸念しており、著作権をめぐる緊張はSoraにも及んでいる。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、フィードバックを集めつつ近く権利者にキャラクター生成の制御権と収益化の道を提供すると述べた。かつてはサービス上で肖像やブランドの利用を避けるには権利者がオプトアウトする必要があり、そのため故人が実験の的になりやすかったとの指摘もあった。CivAIのルーカス・ハンセンは、もはや誰も動画を証拠として受け入れないだろうと述べ、テレビや映画の映像で主に訓練されたモデルゆえにハリウッド級の画づらほど偽物である可能性が高いと語った。

OpenAIはウォーターマークやメタデータによる追跡技術を採用し、生成物をSoraへ紐づけられるようにしたと説明している。さらに、AI生成動画を楽しみつつAIによる制作と認識できるよう専用アプリとして提供したと同社は位置づける。とはいえ簡単な編集で出所が隠れる現実は、生成と検証のイタチごっこが市場全体で続くことを示す。

競合が加速するなか、横並びで見るとより本物らしい映像を出すという評価がSoraに集まる一方、看板のつづりミスや口元とずれる音声などの綻びは残る。UCバークレーのハニー・ファリドは、偽動画を避ける最も確かな方策の一つはTikTok、Instagram、Snapchatといったソーシャルの利用自体を控えることだと助言する。ソーシャルは真正性にとって厳しい環境だという批判も根強い。

その裏側では、ニューヨーク・タイムズがOpenAIとマイクロソフトを相手取りAIシステム関連のニュースコンテンツの著作権侵害を主張する訴訟を提起し、両社は争う姿勢を示しており、統治の在り方にSoraへの圧力もかかっている。生成動画が研究の枠を越えて日常のフィードに流れ込んだ今、企業は合成コンテンツを伝達手段としてどこまで使いどこで線を引くかを決める局面にあり、その判断がエンタープライズの信頼の形を左右するだろう。