AIニュース

Figma株が54%下落、AI買収で巻き返しへ

掲載日: 2025年11月1日. 10:37
Ethan Jung

ニューヨーク証券取引所への上場から3カ月、同社は株価が54%下落する一方で製品のAI再構築を急ぐという二つの現実に直面している。こうした対照的な局面が現在のFigma stockを物語る。株価は48.73ドルで、企業価値を一時680億ドル近くまで押し上げた初期の急騰から大きく離れている。

ティッカーFIGで7月31日に上場し、公募価格は1株33ドル、初期評価額は193億ドルだった。取引開始直後に142.92ドルまで跳ね上がり、需要は40倍のオーバーサブスクライブに達したとBloombergが伝えた。初動の熱狂は、薄い流通株と期待の高まりが新規上場の価格発見を歪め得るという点でFigma stockを象徴的な事例にした。

ボラティリティの背景には、マーケティングやソーシャル、ブランディング、グラフィック、教育などを顧客に持つインタラクティブなプロダクトデザインのSaaSを巡るアドビとの競合がある。アドビは2022年に200億ドルでの買収を提案したが、2023年末に規制審査で頓挫し、同社は10億ドルの逆ブレークアップフィーを受け取った。複数ユーザーが同じキャンバスを同時編集し、Googleドキュメントのように変更を可視化できる協業モデルに、SlackやJira、Adobe XDとの連携とフリーミアムが加わる。長期的な魅力はこの協業エンジンがGoogle Workspace並みの普及を得られるかにかかっており、その成否がFigma stockの評価を左右する。

しかし競争の衝撃は別の方向から迫る。Nano Bananaとも呼ばれるGemini 2.5 Flash Imageが8月末に登場し、テキストプロンプトだけで生成と同じ手軽さで画像編集が可能になった。専門ツールの強みである緻密なコントロールが依然として優位だという見方もあり、AdobeのFireflyも存在するが、テキスト・トゥ・エディットへの移行が進めばAIネイティブのワークフローへの転換速度が企業価値の決定要因になる。こうした機能がGoogle製品にさらに深く統合されれば入門的な用途での採用動機が細りかねず、そのリスクはFigma stockの見方に直結する。

同社は木曜日、創業から1年のイスラエル発スタートアップ、Weavyを2億ドルで買収すると発表し、対抗策に踏み出した。WeavyはSoraやVeo、Nano Bananaといったモデルをつないでプリミティブを生成し、それらを組み合わせて色補正や照明調整、マスキングなどの成果物を作る。協業キャンバスの中にモデルに依存しないレイヤーを築く発想は、新しいモデルを既存のワークフローに差し込みやすくし、スイッチングコストを高める。こうした設計は堀を広げる試みであり、Figma stockを守る戦略として映る。

足元の数字は体力と期待の双方を示す。直近12カ月のフリーキャッシュフローは2億9430万ドル、売上高は第2四半期時点で前年同期比41%増の2億4,960万ドルで、2029年には年間フリーキャッシュフローが3億6,750万ドルに達するとの予想がある。とはいえ現段階で割引キャッシュフローの推定は難しく、直近12カ月のPERが261.06とアドビの21.10に比べて高いことは現在の評価に疑問を投げかける。こうした乖離がFigma stockに付与されたプレミアムの妥当性を試している。

市場の動きも慎重姿勢を裏付ける。直近3カ月でアドビ株は5.5%安、FIGは54%安で、アナリストの見方は売りゼロ、ホールド8、買い4に集まり、平均目標株価は67.57ドル、下限49ドル、上限85ドルとなっている。期待と価格のギャップを実行で埋められるかを見極めるという、控えめながら前向きなスタンスがFigma stockに向けられている。

より広い文脈では、制作と編集を横断する生成モデルとの融合が進み、SoraやVeoが自動生成を強調し、Nano Bananaがテキスト誘導のコントロールを際立たせている。プリミティブに焦点を当てるWeavyの手法は、協業を壊さずに異なるエンジンを入れ替えたり組み合わせたりできるモジュール型の未来を示す。グローバル投資家にとって2億ドルの買収は、プラットフォーム転換期には内製よりもM&Aで時間を買う判断が優先されやすいことを示唆する。こうした流れが続くなら、モデルに依存しないビルディングブロックを日常のワークフローに落とし込める企業が勝者となり、その帰結がFigma stockの持続力を決めるだろう。

Ethan Jung profile photo
By Ethan Jung ethan.jung@aitoolsbee.com 最新の生成AIモデルや革新的なツールの技術動向を分析します。
AI技術の進化がどのように新しい製品やサービスを生み出しているのかを紹介し、AIツール業界全体の技術的トレンドを迅速に伝えます。